~TEMPO:MVで創作#1~
チャニョルとジョンデ、
かつて二人は互いに認め合う
頭脳明晰な学生として学内でも有名だった。
それが今では
片や取り調べを行い
片や取り調べを受ける立場になっている。
ただ、これは表向きの姿。
二人の真の姿は
ジョンデは諜報部員。
そして
チャニョルもまた諜報部員であった。
それも
互いに対立する機関の・・・
『RED CUBEの謎』
これが二人が探っていることだった。
ただし、それは諜報部員としてではなく
更にその裏で独自に動いて探っていたのだ。
そして二人はまだ
互いの真の姿を知らずにいた。
マジックミラーの窓越しから
ジョンデはかつての友人を見つめていた。
チャニョル・・・
あいつ、何故あんなチンピラ同然にまで
零落したんだ?
あいつの性格からして、
自分から身を投じたとは思えない。
何か目的があるはずだ。
それなら
裏の顔は何だ?
ジョンデが取り調べ室(のような部屋)
に入ると
チャニョルはニヤリと笑みを浮かべて
刺すような視線でかつての友人を見上げた。
「バーの裏にこんな仕掛けがあるとはな。
カメラ、テープレコーダー、そして
マジックミラーの窓。お前、警察官だろ。
こんな裏社会で取り調べ紛いのことまで
やっているのがバレてもいいのか?」
『馴れ馴れしく話しかけるな。
俺はお前のことなど知らない。
通報があったから来たまでだ。』
チャニョルは直ぐさま理解した。
そうか、テープレコーダーに
俺との関係がバレるような証拠が
残ったらマズイんだな。
それなら、少し遊んでやるか。
不敵な笑みを浮かべるチャニョルの目は
獲物に狙いを定めた獣のようになった。
『不法侵入、器物損壊、暴行、窃盗未遂、
何を探していた?』
「さあね。それを調べるのがあんたらの
仕事だろ。」
チャニョルは嘲笑うように言い放った。
「そんなもので俺が崩せるとでも
思っているのか。」
チャニョルは諜報部員としての
厳しい訓練を受けた仲間たちの中でも
ずば抜けた精神力を持っていた。
中には訓練中にパラノイアと診断され
脱落していく者も多数いた。
ジョンデの手に持たれたもの、
そこに映り込む自分の姿に陶酔する
チャニョルは一層不気味さを増した。
『まあ、いいだろう。』
そう言うと、ジョンデは
テープレコーダーのスイッチをOFFにした。
そして今までのエリート警察官から
態度を一変させた。
『お前と取り引きしたい。』
『お前が知り得た情報を全部俺によこせ。』
「テープレコーダーをOFFにした途端
これかよ。情報?何のことだ。
お前、俺の何を調べてる。」
チャニョルは賭けに出た。
ジョンデを揺さぶりにかける。
しかしこれは危険な賭けだった。
「俺に、お前のエージェントになれ、
そういうことか?」
一瞬、ジョンデの眉が動いた。
そしてチャニョルはそれを見逃さなかった。
『エージェントだと?』
ジョンデはその世界を知らないふりをして
この言葉を口にした。
チャニョル、お前も諜報部員なのか?
まさか俺がそうだとお前は気付いたのか?
ここからは二人の心理戦になる。
ジョンデはあくまでも平静を装った。
そしてまたチャニョルもそれは同じだった。
二人は同じことを考えていた。
諜報部員になって
様々な情報を探るうちに気付いた。
俺たちがいるこの世界は・・・
CUBEの中だ。
でも、誰が信じるそんなこと。
CUBEの謎を解かない限り
俺たちは出られない。
大抵の人間はそんなことを知らずに
普通に生活している。
俺たちはその謎を解明するために集められ
特別な訓練を受けさせられたとばかり
思っていた。でも、それは違った。
上層部もCUBEのことは気付いていない。
表向きは警官
表向きはチンピラ
そして裏の顔は諜報部員
ここまでが上層部が把握していることだ。
使い捨てにされるのはゴメンだ。
裏の顔のノウハウを活かして
CUBEの謎を解く。
そしてこの世界から脱出する。
二人が同じことを頭の中で考えていると
今までそこには無かったはずのCUBE、
それがいつの間にか机の上にあり
そして緑色の閃光が天井を突き抜けるように
伸びていた。
あいつが動いた!
そう、CUBEの一片を持つこの男。
CUBEの謎を解く鍵はこの男が持っている、
二人はそう思っていた。
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