~TEMPO:MVで創作#2~
二人は同じ会社で働いていた。
シウミンはシステムエンジニアとして、
ギョンスはプログラマーとして。
同期入社の二人は
プライベートでも仲が良かった。
二人はプロジェクトチームで
一緒になることが多く、
お互いの特性をよく理解していた。
システムエンジニアである
シウミンの書く仕様書は
時々大まかなことしか書いていない。
細かな指示が書いていなくても
ギョンスは内容をよく把握し
プログラミングしていく。
一つのシステムやソフトを開発するために、
何度もテストを繰り返さなければいけない。
忍耐力が必要となる仕事だ。
ギョンスの忍耐力と仕事の正確さ、
寡黙でオープンな性格ではないところ、
今回のプロジェクトにはとても向いていた。
いつもと違うのは
クライアントが
僕、ということ。
シウミンは自分とギョンス、
二人だけのチームだと言い、
他とは隔離された部屋で作業を進めた。
今回のシステム開発は
ギョンスを呼ぶための口実でしかなく
真の目的は
CUBEを完成させること。
🌹
二人しかいない隔離された部屋で、
休憩と称してはチェスをした。
『変わったチェスだね。』
ギョンスに言われシウミンは
「僕たちはシステムエンジニアと
プログラマーだ。
普通のチェスにはもう飽きただろう?
お前が普段仕事で発揮している能力と
今回この初のCUBE型チェスに
いかに工夫したアルゴリズムを構築するのか
見てみたいと思ってさ。
だからこれを取り寄せたんだ。」
『僕を誉めるようなことを言って、
本当は自分が攻略出来ないからだろ。』
ギョンスはいつも冷静な口調で
何でもお見通しだと言わんばかりだ。
ギョンスは勘が良い。
だけど僕のことをよく解っているからこそ
まさか僕が彼を利用するとは
思ってはいないだろう。
『シウミン、花好きだったっけ?
何でこんなに沢山、男二人だけの
作業場に?』
「作業場て、一応ここは休憩室だよ。
リラックス出来るようにね。
男二人だけなんだから、余計さ。
お前とは喧嘩したくないよ。」
ギョンスはこの花の香りの効果を知らない。
僕はこの日の為に何ヵ月も前から
この香りが身体に与える影響を回避する薬を
服用してきた。
この花の香りの作用は直ぐには出ない。
ある一定期間以上嗅ぎ続けると表れるが
毒性ではないため怪しまれることはない。
予め、ギョンスの身体に
どの程度効くものなのか、
彼のアレルギー反応を調べ
抗体があるもので僅かな数値が出る
境界線のものを選んだ。
そして彼が飲むお茶も
その効果が上がるように作用するものを
用意した。
彼は珍しいお茶が好きな為、
僕が彼のために用意したと言えば
何の疑いもなく飲むはずだ。
シウミン・・・
僕が何も気付いていないとでも?
君のことは仕事のパートナーとして
とても信頼している。
だけど今回のプロジェクトが二人だけ、
というのはミスったね。
この業界でそれは不可能だ。
『CUBE』
それが
いつも冷静な判断を下す君を
狂わせた。
多分、情報、依頼元は僕も君も
あの男からだね。
君からの誘いが無ければ
僕のほうから誘うつもりだった。
ただ僕は一人でも完成させることが出来る
自信はあった。
君からの誘いを受けたのは
二人で完成させて
二人でこの世界から抜け出したかったから。
でも
どうやら君はそうではなかったみたいだ。
君の嘘が僕には悲しい。
僕は気付いていないフリをし通すよ。
「さすが、僕とギョンスだね。
もっと時間がかかると思っていたけれど
見事なCUBEが完成したよ。」
『僕たちの本当のプロジェクトは
これで終わりなの?』
そう聞かれてシウミンはギョンスの顔を
暫くみつめていた。
「本当の?」
『ああ。』
ギョンスはいつだって冷静で
表情一つ変えることは無い。
「ギョンス、それはどういう意味?」
『僕は気付いていたよ。でも、
君のために知らぬフリをしていたんだ。』
「・・・・・・・」
『このCUBEを完成させることが
僕を呼んだ本当の目的だったんだろう?』
ギョンスがそう言うとCUBEが光り始めた。
そしてその光を見ると同時に
ギョンスはその場に静かに横たわった。
ギョンス、ごめん。
CUBEの組み立て方は解った。
でも、これは誰にも見せてはいけないんだ。
一度崩すよ。
やっぱり君は何でもお見通しだったんだね。
ギョンス、許してくれとは言わない。
勝負だったんだ。
僕が頭の中で描いた仕様書通りに、
今回も君が見事に仕上げてくれた。
ただ、一つだけ僕の計算とは違っていた。
それは
君が僕の計画を知りながら
CUBEを完成させるまで
知らぬフリをし通したこと。
ギョンス、
君の優しい嘘と寡黙さが、今回君にとって
残念な結果になってしまった。
僕はこれからあの男のところへ行くよ。
君もこの男と繋がっていたんだろう?
CUBEの完成で僕たちの運命は変わるんだ。
🌹
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